今日の一句 柔らかいとんかつではずむ会話

 今日の一句は自由律句集から

 柔らかいとんかつではずむ会話 本間とろ『純真』より

 とんかつ.jpg

 自由律俳句で思い出す俳人の一人に種田山頭火がいる。本間とろのこの句集名は、山頭火の「純真であることの外に私の生きる道はない」という言葉から選ばれた。確かに、この句集『純真』の句からは、本間が自分自身と真摯に向き合って句を詠んでいることがよく伝わってくる。

 さて、とんかつだ。隣りにキャベツが添えられていたかどうかはともかく、見るからに柔らかくておいしそうなとんかつを前に、二人の笑顔がまず思い浮かぶ。

 「おいしいね」「柔らかいよ」「こんなに厚い」「出来立てだね」

 次々に肉を口に運びながら、二人の会話も途絶えることがないのだろう。もし、この二人が久しぶりに会ったのならば、このとんかつは、間違いなく二人の距離を縮めてくれたことだろう。たとえ、初対面だとしても、二人の間の緊張を、あっという間にくずしてくれたにちがいない。

 「覚えている?」「ああ、あの時は笑っちゃったよね」

 次々に上る話題も、このとんかつが笑顔にしてしまう。

 全体に内省的な句が多い句集の中で、この句が放つ明るさは貴重だ。コロナ禍で友と一緒に食事する機会が減ってしまった現在、この句の描き出した風景は、とても懐かしく温かい。
 



 

 

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