今日の一句 かの鷹に風と名づけて飼ひ殺す 

 この一週間、整形外科に通ったおかげで、だいぶ楽に歩けるようになった。あとは身体の中からも、治るような食事を工夫しないと。そんなことで少し、気が楽になった。いや、年月が経つと、身体も変わっていくんだね。せめて、俳句はさび付かないようにしたいけど… 

 久しぶりに今日の一句。

 かの鷹に風と名づけて飼ひ殺す 正木ゆう子 句集『悠 HARUKA』より

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 家の外を風が吹いている。部屋にいて風の音を聞いていると、窓ごしにビュービュー、風がうなりながら過ぎて行く。その風の重みに耐えかねたように、窓もカタカタ鳴る。

 何という風の激しさ。少しでも油断して戸など開けようものなら、家を自分を、何もかもまるごとさらって行きそうだ。この冷たく鋭く容赦のない風に、日々、ただ囲まれているしかないのか。ひたすら座って、通り過ぎるのを待つしかないのか。

 と、そこで、胸の底から強く激しい思いが湧きあがるのに気がつく。この風をはね返したい。負けたくない。このまま風に取りまかれて、打ちひしがれたように生きるのはいやだ。

 そう、この風を飼ってしまおう。飼いならしてしまうのだ。それも鳥の王者ともいわれる鷹として飼うのだ。日々、声をかけ、餌をあげ、撫でて、一緒に遊んで、友だち同士になるのだ。

 そうなれば、この恐ろしいまでに吠え猛る風も恐くない。「ああ風ね。今日も元気ね。いいことだわ」と、平然とやり過ごせるだろう。

 この句の「飼ひ殺す」の向こうに、負けず嫌いな作者が見え隠れするのも、何とも楽しい。