今日の一句 野となりて秋も眞葛も流れけり

 今日は少し物寂しい句。

 野となりて秋も眞葛も流れけり 斎藤 玄 『齋藤玄全句集』

 真葛.jpg

 秋の野だ。夏の緑の盛んな時期を過ぎて、重なるように生えていた草の緑色は、ややくたびれ加減といった野だ。だが枯れるにはまだ早く、ススキは緑色の細長い葉をすっと伸ばしているし、近くには萩の小さな花が咲き始めているかもしれない。

 そんな野に蔓を伸ばしていたのが眞葛だった。だが、せっかく伸びた眞葛だが、近くに巻き付くことのできる木の幹などなかったのだろう。地面を這うことも叶わずに、その長い蔓をただひたすら風吹くままに任せて揺らすしかなかった。もう少し強風になれば、茎ごとさらわれてしまうかもしれない。なんとも不確かな眞葛である。

 さらに真葛を離れて、野全体に視野を広げると、風に吹かれているものの多いことよ。秋とは流れゆくものだった。今、ここに立つ自分も、間違いなくそんな流れるものの一つである。

 真葛の別の名はサネカヅラという。『小倉百人一首」に「名にし負はば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな」の和歌があるが、その意味するところは、サネカヅラの蔓を手繰って恋しい人が来てくれないものか、というもの。

 ここ齋藤玄が見つめる秋の野の眞葛の蔓は、ただひたすら流れるばかりだった。

 

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