今日の一句 鮎たべてそつと重たくなりにけり 阿部完市

 今日は久しぶりに俳句。

 鮎食べてそつと重たくなりにけり  阿部完市 『現代の俳句』より

 
 鮎.jpg

 鮎は体長およそ20センチメートルほど、やや緑がかった灰色、華奢ですんなり細身。4月から5月ごろ、産卵のために川に戻ってくると、その可憐な姿のままに泳ぐという。「清流の女王」と呼ばれるのもうなずける。

 私が鮎にお目にかかったのは20代だったころ、信州を旅した時だった。残念ながら泳いでいる姿ではなく、食卓の皿に乗ったそれだった。確か焼いてあったと思う。これが鮎。尻尾のあたりに焦げ目があったが、予想していたより小さいな、と思ったことを覚えている。

 食べてみると、藻類を主食とするだけあって、淡白なあっさりした味わいで、ほのかに苦かったことを思いだす。さらに、食べられる身の部分より骨の方が多いくらいで、あっけなく食べ終えてしまったのだった。

 阿部完治市の句「そつと重たくなりにけり」が生きるのは、確かに鮎だからと納得せざるを得なかった。

 人は、何かを食べて生きていく。何かの命をもらって、いただいて、食べて生きていくのだ。食べた証、頂いた証に、身体が重くなる。日ごろから人間および生命を深く捉え、思考していなければ、できない発想だろう。

 阿部完市はひょうひょうと言葉を使っているようで、実はち密に心をたずね、言葉を探す俳人だった。


 

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント